第27回八ヶ岳フォトコンテスト
全国から75名、182点のご応募をいただき誠にありがとうございました。(敬称略)
【総評】
本年度は出品作が少なかった割にかなりレベルの高い作品が応募されました。時代に囚われずフィルム派も何人も参加し良い作品を出品して居り喜ばしい事です。小生は山と人との関りを薦めて居りますがもう少し自然に人が溶け込んだ作品が欲しいものです。夜をテーマにした作品では、デジタルの感度の良さを計算した星空の作品が見事でした。色々な着眼点が広がり今度の応募も大いに楽しみです。(審査アドバイザー:武藤 昭)
茅野市観光協会長賞
朝陽に映える権現
脇坂 恭司(東京都町田市) 撮影地:赤岳
【選評】
古来より甲斐の国より見た八ヶ岳は、権現岳に代表されていた。当然、神の宿る場であり修行の聖地でもあった。そんな厳しさを感じさせる冬のこの写真は誠に威厳がある。雪のハイライトと手前の深いシャドウのバランスが良い。奥に控える南アルプス三山との空間もどっしりと重い空気感として冴えている。
八ヶ岳観光協会長賞
暖かい山小屋へ・・・
増村 多賀司(長野県北安曇郡) 撮影地:北横岳北峰
【選評】
重く黒い雲が八ヶ岳全体の上に乗っていて恐ろしい予感がするが、中央に輝く縞枯山の樹氷のハイライトが絶妙なバランスを取っている。北横岳からの構図位置が良く、樹氷の森の中央に山小屋を置いた事でホッとする救いを感じさせる。眼下の森はもう少し切った方が画面が締まる。
茅野商工会議所会頭賞
錦絵の蓼科
佐川 隆博(長野県茅野市) 撮影地:2in1スキー場
【選評】
豊かに連なる八ヶ岳の峰々と霊峰富士、右手に広がる南アルプス。このショットは典型的な茅野市側の山岳風景である。神々しい朝焼けの黄金色と山裾に広がる雲や朝霞の対比が見事である。その下に広がる広々とした山麓の尾根のうねりと街の姿には安定した平和すら感じられる。それをより温かく見せているのが手前の枯れ草と雪の美しさだろう。もう少し天と地を切りパノラマ風にするとより一層ダイナミックな絵になります。
小海町観光協会長賞
錦秋の彩
岡本 芳隆(神奈川県横須賀市) 撮影地:白駒池
【選評】
白駒池の秋の絵は毎年多く見られるが、この作品は作画が優れている。右手にドンと赤を置いたのと藻草の流れを上手に処理し、豊かな動きを出している。ただ奥の山と山荘の落ち込みをもう少し明るく出来れば良かった。雲の量と形も待てばなんとかなったのかもしれない。
佐久穂町観光協会長賞
夜空のラプソディー
佐々木 浩(長野県南佐久郡) 撮影地:八千穂高原
【選評】
フィルムからデジタルに成った最も優れた効果の一つがこの表現に見られる。一般の人の眼には月が出ている時にこんなに星屑は見えない。デジタルの表現は人間の眼以上なのである。手前の雲上の林の影も、奥の残陽の赤も現実より美しく表現されている。将に幻想の世界である。もう少し空を切って広がりを強調すると世界が広がる。
ラムダ賞
厳冬の岩峰
山下 研作(神奈川県平塚市) 撮影地:赤岳鉱泉
【選評】
冬の横岳や大同心が結氷するのはなんとも迫力があって美しい。が、これも天候と気温次第で直ぐ消える事が多い。幸いこの時の気温は冬山として安定している様である。空の青、岩峰のシャドウ、手前の森の暗部もバランスの良い配分と成っている。手前の森の中の樹氷が美しく、岩峰雪面の白のコントラストが一層画面の立体感を出している。
モンベル賞
きれいだね
小川 深志(長野県茅野市) 撮影地:白駒池
【選評】
秋の快晴の湖畔。都会の喧騒を離れて自然の中に遊ぶ健康そうな若い親子が清々しい。午後の斜光線にクッキリと桟橋やボート、紅葉が輝き雲も程良い処に在る。暮らしの中の幸福な瞬間。もう少しタイミングを待って子どもの顔を見せたかった。
信濃毎日新聞社賞
暮色
五味 輝夫(長野県茅野市) 撮影地:行者小屋
【選評】
既に陽の落ちた残照が色良く大同心から横岳に輝き、暮色の青さの中に美しい。照明された如く色とりどりにテントが散在し、夕食の支度の為か、人々のヘッドランプだけが走り廻る。長時間露光の効果を計算したファンタジックな冬の赤岳鉱泉天幕場。奥の雪原を照らす小屋の明かりと、右奥の黄色いテントが奥行きを作り良い。もう少しカメラ位置を下にして画面下の表を豊かにしたい。
長野日報社賞
新緑に華そえて
城戸 和子(神奈川県小田原市) 撮影地:八千穂高原
【選評】
春山の生き生きとした森。手前のスポットライトの入ったレンゲツツジを中心に左廻りに右奥への流れる構図が心地良い。手前の花にピントを定め奥をボカした所が春らしく効果的。木々の配置もやや斜めにしたアングルも奥行を出すのに役立って美しい。ポーラスクリーンを使って林の向こうの空の色を出すともっと美しく成るでしょう。
茅野市民新聞社賞
稜線に初夏の訪れ
上条 英直(長野県松本市) 撮影地:横岳
【選評】
白馬岳と八ヶ岳のみに生存する希少植物で、発見者の父の名が付けられ九十九草(ツクモグサ)と成った。普通の花の本には載っていない珍種。厳しい荒地や岩壁に咲くこの花は、未だ余り人も通わぬ初夏の横岳の岩場で出会える。寒気を守る為、深々とした毛に包まれ岩壁に風で揺れ輝いている。見るのも大変なら撮るのも手間が掛かる。上手なアングルでまとめてあり、奥の阿弥岳の残雪が季節を現している。
八ヶ岳特別賞
【八ヶ岳特別賞 総評】
美しく変化に富んだ作品群が並びました。清々しい雰囲気の中に光るものを感じます。中でも佐々木浩氏の白駒池の星空や牛田光則氏の行者小屋の風景は着眼点の優れたものでした。小島輝夫氏の北横岳、小川明広氏のコマクサ、太田秀男氏の赤岳山頂、土橋和夫氏の山梨の花が咲く丘など出色の出来と云えるでしょう。
蓼科高原賞
【蓼科高原賞 総評】
様々な角度から「蓼科高原」を捉えた変化に富んで楽しいものが出て来ました。もう少しアングルを変えるとか画面の構成要素を考えるなど、いずれもあと一歩の感がありました。次回も益々張り切って応募される事を期待しております。